前置き長くなったけど、まあうまくやってるってんで、
Nさんの舎弟のSさん、Kさんなんかに、結構信頼されるようになった。
それで、時々花の配達に使ってるワンボックスで、夜中に呼び出されるようになった。
積んでるのは、多分ドラム缶とか段ボール。
荷物積む時は、俺は運転席から出ない事になってたし、後ろは目張りされてて見えないから。
それで、ベンツの後ろついてくだけ。
荷物を下ろしたら、少し離れたところで待たされて、またベンツについて帰って、金もらって終了。
何を運んでたなんて知らない。
その代わり、1回の仕事で、花の配達の1ヶ月分のバイト代をもらえた。
ある夜、また呼び出された。
行ってみると、いつもとメンツが違う。いつもはSさんかKさんと、部下の若い人だった。
ところがその日は、幹部のNさんがいて、他にはSさん、Kさんの3人だけ。
3人とも異様に緊張してイラついてて、明らかに普通じゃない雰囲気。
俺が着いても、
「エンジン切って待ってろ」
って言ったまま、ボソボソ何か話してた。
「・・・はこのまま帰せ」

「あいつは大丈夫ですよ。それより・・・」
途切れ途切れに会話が聞こえてたけど、結局俺は運転していく事になった。何だか嫌な予感がしたけどね。
後ろのハッチが開いて、何か積んでるのが分かった。
でも今回は、ドラム缶とか段ボールじゃなかった。
置いた時の音がね、いつもと違ってた。重そうなもんではあったけど。
更に変だったのが、SさんとKさんが同乗した事。
いつもは俺一人でベンツについてくだけなのに。
しかも、いきなり首都高に入った。
あそこはカメラもあるし、出入口にはNシステムもあるから、
こういう仕事の時は、一般道でもNシステムは回避して走るのに。
首都高の環状線はさ、皇居を見下ろしちゃいけないとかでさ、何ヵ所か地下に入るよね。
恥ずかしながら、俺は運転には自信あるけど、道覚えるのは苦手なんだよね。方向音痴だし。
多分環状線を、2周くらいしたと思う。
車が途切れたところで、突然Nさんが乗るベンツが、トンネルの中で、ハザード出した。
それまでSさんもKさんも、ひと言もしゃべらなかったけど、Sさんが
「右の車線に入って止めろ」
って。言われるままに止めたよ。そこって合流地点だった。
で、
「中洲みたいになってるとこに、バックで車入れろ」
って言うから、その通りにしてライト消した。
両側柱になってて、普通に走ってる車からは、振り返って見たとしても、なかなか見つけられないと思う。
まあ見つけたとしても、かかわり合いにならない方が良いけどね。
Nさんが乗ったベンツは、そのまま走り去った。
SさんとKさんは、二人で荷物を下ろしてたけど、俺にも下りて来いって。
俺はこの時も嫌な予感がした。今まで呼ばれた事なんて無かったし。
SさんとKさんが、二人で担ぎ上げてるビニールの袋。
映画とかでよく見る、死体袋とかいう黒いやつ。もう中身は、絶対に人間としか思えない。
とんでもない事に巻き込まれたって思って、腰が痛くなった。多分腰抜ける寸前だったんだろう。
何で組の人じゃなくて俺なの?ってその時は思ったけど、その理由も後になれば分かったんだけど。
で、Sさんが
「ポケットに鍵があるから、それ使って、金網の扉の鍵開けろ」
って言うから、言う通りにした。
金網開けて5〜6メートルで、また扉にぶつかる。
扉というより、鉄柵って感じかな。だって開ける為の把手とか無いし、第一鍵穴すら見当たらない。
どうすんだろうな〜と思ったら、またSさんが別のポケットを指定。
今度は大小ひとつずつの鍵。コンクリの壁にステンレスの小さい蓋が付いてて、それを小さい方の鍵で開ける。
中に円筒形の鍵穴があって、それは大きい方の鍵。
それを回すと、ガチャって音がして、柵が少し動いた。
右から左に柵が開いた。壁の中まで柵が食い込んでて、その中でロックされてる。
鍵を壊して侵入は、出来ない構造らしい。
更に先はもう真っ暗。マグライトをつけて先に進んだけど、すぐに鉄扉に当たった。
「無断立入厳禁防衛施設庁」って書いてあった。
これは不思議だった。だってここ、道路公団の施設だよね?
ていうか、こんなとこ入って平気なのかな、って思った。
まあこの人たちのやる事だから、抜かりは無いとは思うんだけど、
監視カメラとかあるんじゃないのって、不安になった。
まあ中に進んだら、もっと不思議なもんが、待ってたんだけどね。
鉄の扉も、さっきの鉄柵と同じ要領で開いて、俺たちは中に入った。