うちの集落にはハカソヤという女限定の変な習慣があります。
ハカソヤにも色々あって、大きく分けてお祝いの言葉に使う場合とお守りのことを指す場合があります。
お祝いの言葉のほうは、例えば初潮が来た女の子や恋人が出来た未婚の女性に「おめでとう」の代わりに言ったりします。
お守りのハカソヤは母親から一人前になった娘に手渡す安産のお守りのことを言います。
例えば娘が就職して実家を出て遠方に行くときなんかは必ずもたせます。
この場合何をもって一人前とするのかは割といい加減で……
家によっては初潮と同時だったり、就職やお嫁入りの時だったりとバラバラなのですが、とにかく安産のお守りなのは共通しています。
(妊娠していてもいなくても。ていうかしてない場合がほとんど)
両方に共通しているのは、
「必ず男性が見ていない、聞いていないところで」と言うことです。

あんまり怖くないかもしれないけど、昔、叔父さんから聞いた話です。
叔父(以後、S治)が小3の時、クラスにN谷さんという子がいた。
N谷さんは掃除していない奴に進んで「ちょっと!」とか言いに行く、クラスの委員長っぽい性格で、
女子の友達は多いけど、一部男子からはちょっと疎まれやすい感じの子だったらしい。
S治はわりと大人しく、真面目な学生だったということで、N谷さんに怒られることもなかったし、
遠足の班が一緒だったこともあって仲良くしていたらしい。
二学期になった頃、S治はいきなりN谷さんに誘われて、交換ノートをしたりもしていたらしい。
んである時、男子の中の一人が「N谷さんに スカートめくりをしよう」みたいなことを言ってきたらしい。
それは、掃除の時に男子数人で教室の隅にたむろし、N谷さんが注意しに来たところでスカートをめくるという、
ごく単純なものだった。
S治はN谷さんと交換ノートをしてたりで以前から噂になっていたので、
これ以上疑惑が深まらないよう、止めもせず賛同したらしい。
掃除の時間、作戦決行となり、S治を含む4〜5人で部屋の隅に固まっていると、早速N谷さんがこちらに近づいてきた。
その瞬間、男子全員が一斉に立ち上がり、スカートをめくって逃走!のはずだった。
スカートをめくった瞬間、全員が一瞬見てしまった。
N谷さんには太腿辺りが存在せず、
二本の太い金色の鉄パイプのようなものが膝の少し上から繋がっていて、
それを覆うように半透明のヒヤシンスの根のようなものがビッシリ生えていた。
皆、一瞬「えっ?」って感じになった後、
全員『何かやばい』と感じて逃げたらしく、次の瞬間にはS治以外誰もいなくなっていた。
でも何かがおかしい。
スカートをめくった奴ら以外の他の生徒も皆いなくなっている。
S治が見上げたN谷さんの顔は、
顔全体がピンク(しかも人工的で消しゴムみたいなピンクだったらしい)になっていて、全体的に縦に歪み、
左右の眼の大きさが二倍ぐらい違ったらしい。
キ―ンっていうような音が教室全体から響いてきて、気がつくとS治は通学路にいたらしい。
昼休み直後だったはずなのに、時間は既に15時を過ぎていて、
ちゃんと外履きだったし、ランドセルも背負っていた。
S治が焦っていると、前からN谷さんが歩いてきた。
いつも通りの姿に戻っていたN谷さんは、
「A君( スカートめくり案者)に言われたの?」と、S治に怒るでもなく聞いてきたらしい。
S治は咄嗟に、
自分は(教室で飼っていた)カマキリに餌をやっていただけで、何があったかよくわからない、
というようなことを言ったらしい。
N谷さんは「ふーん」と言ってしばらく黙っていた後、「交換ノート返して」と言ってきた。
言われるがままにノートを渡すと、N谷さんは去って行った。
S治は状況が呑み込めなかったし、ただ漠然と「怒らせたかな?」と思ったらしい。